次に来る時は、それ、おみやげね
もうひとつ、もらえなかったプレゼントの思い出がある。
パンダのぬいぐるみをくれたカメラマンの伯父は父の兄弟の2番目で、その上に、長兄がいた。長兄夫婦、つまり、こっちの伯父と伯母には子どもがいなかったこともあってか、私のことを、いつも、ものすごく可愛がってくれた。
伯母は美しい人で、髪をひっつめにして、後ろの髷に、きれいな玉かんざしをさしていた。そして、わが家に来ると、必ず、私に、
「あーら、おみやげ忘れちゃったわ。ごめんなさい。いま、何か欲しいものある?」
と聞いてくれた。
その頃、私の欲しいものは決まっていた。
「ビーズの詰め合わせ!」
ひし形の箱に入った、ビーズの詰め合わせが、ずっと私のあこがれだった。
蓋がガラスになっていて、たくさんのビーズがきっちり色分けされて入っているのが、外からでも見える。とても、きれいなものが、ギュッとまとまって詰まっているのが、たまらなく素敵な感じがして、あれが、絶対に欲しかった。
伯母に、そう説明すると、
「じゃ、次に来る時は、それ、おみやげね」
と笑った。