黒柳徹子
(撮影:下村一喜)
NHK専属テレビ女優第一号として、テレビとともに歩み続けてきた黒柳徹子さん。MCを務める人気番組『徹子の部屋』は、2025年で50年目に突入しました。今回は、そんな徹子さんが人生のさまざまな場面で励まされてきた「あの人たちの言葉」で半生を振り返る自叙伝『トットあした』から、一部を抜粋してお届けします。

小学3年生くらいのクリスマス

サンタクロースはいる、と固く信じていた私が、(あれ? サンタクロースって、いないのかな?)と思うようになったのは、小学3年生くらいのクリスマスだった。

毎年、クリスマスの前に、母から「サンタクロースさんには、何をお願いするの?」と聞かれ、「ぬいぐるみをお願いして」と頼んで、クリスマス・イヴの夜、靴下をベッドの脇に吊るしておくと、朝、目が覚めたとき、枕元に、ぬいぐるみと、サンタさんからのお手紙が置いてあるのだった。

私は、なんとかサンタさんを見たいと思って、頑張って起きていても、つい眠ってしまって、目が覚めると、いつの間にかプレゼントが置かれているから、毎年、うれしいのと悔しいのとが、まざった気分になった。他の年のクリスマスには、リリアンを編む道具とか、千代紙のセットとか、私の欲しいものを、サンタさんはきちんと持って来てくれた。

その年も、母に聞かれて、私は、髪の毛を横に結んで、大きなリボンをつけた女の子の綺麗な絵を見ていたので、「大きいリボンが欲しい。お花とかの模様があって、幅の広いやつがいいな」と答えた。母は「そうねえ。いちおう、頼んでみるけど、サンタさん、そういうリボン、知っているかしらねえ」と、ちょっと困ったふうに言ったのが、私には意外だった。サンタさんなら、何でも知っているし、何でも持っていると思っていたからだ。