何事もあきらめずに取り組めば、どんな峠も越えられる

――そして今年は戦後80年という節目の年でもあります。

今年の夏は、多くの戦争関連書籍が刊行されると思います。その節目の年に、私も何らかの足跡を残しておきたいという思いがありました。

戦後100年では85歳になってしまうので、生きていても大長編を書く気力があるかどうか分からないので、今回は、自分なりに「あの戦争」を総括しておきたかったのです。

日本人はこの80年、平和を貫きました。その実績があるからこそ、これからは国際社会に対して発言力を増していくべきだと思います。そのためにも過去の戦争から学び、それを克服していかねばならないのです。

――本作を通じて伝えたい思いや、テーマを教えてください。

伊東潤さんの写真
呉港を取材する伊東さん

「何事もあきらめずに取り組めば、どんな峠も越えられる」ということです。最近、「無理」「不可能」と言って何事も早めにあきらめる人が増えていますが、それでは何かを成し遂げることはできません。大和を造った造船士官たちのように、次から次へと襲い掛かる難題を乗り越えてこそ勝利や成功はあるのです。

――満州を舞台にした『夢燈籠 野望の満州』や戦後の沖縄を舞台にした『琉球警察』など、難しいテーマに次々と挑んでいますが、それはなぜですか。

歴史小説、とくに戦国時代ばかり書いていれば、これほど楽なことはありません。しかし難しい題材にチャレンジしてこそ、作家としての成長があるのです。また、後進にそうした姿勢を見せることが大切だと思うからです。

本作では、軍艦の建造過程という難しい題材にチャレンジしました。読者を選ぶ題材だとは思いますが、読者も作家に挑むつもりで読んでほしいですね。