長生きの秘訣は怒らないこと
崑さんと言えば「オロナミンC」のCMがすぐに思い浮かぶが、『頓馬天狗』の名前が「尾呂内楠公(おろないなんこう)」だなんて、ちょっとびっくり。
――それは大塚製薬さんの一社提供やったからね。もうオロナミンCと言ったら大村崑の分身みたいになってますよね。その前のオロナイン軟膏のCMは、浪花千栄子さんに取られちゃった。
ある時、浪花さんが大塚の社長とご飯食べて、「社長、私の本名聞いたらびっくりよ。南口(なんこう)キクノって言うの」って言ってね(笑)。それで僕がすねて怒ってたら、部長が新製品持ってきて、「これのCM、勝新太郎、丹波哲郎、大村さんが候補に挙がって、やっぱり崑ちゃんにしてもらいたい、と社長も言うてます」。
でも僕の性格で、カチンと来てるから「やりません」の一点張り。専務が来て、またその上の常務が来て、さあ断るぞと僕が口を開けた瞬間、ギャラが上がっていくのを横で見ていた瑤子さんが、「やらせていただきます!」(笑)。それ以来、「誰のおかげ?」「あなたのおかげ。ありがとう」言うてます。
僕は、ほんとは若い時に結核で片肺取ってて、お医者さんに40までしか生きられない、って言われてたんで、「元気ハツラツ! オロナミンC」って言って、40で死んでは申し訳ないと思ったんやけどね。
それがこんなに長く生きて、それでも何年か前にはいっとき弱りかけたんやけど、86歳の時に本気で筋トレ始めて、これ、芸を盗むのと同じで、トレーナーの先生の動きを真似てたらみるみる上達してね。(笑)