憧れのスターさんと一緒に……
それにしても崑さんは見た目も本当にお若い。年を重ねて、まったく変貌してしまうお方が多いなかで……声も変わらないし。
――この間、東京駅でタクシーに乗ったらね、東京で一番お年の運転手さんで、僕の声聞いて「あ、大村崑さんですね」って。「顔もお若いね、おいくつです?」って訊くから、このおっさんを受けさせなきゃ、と思って「未年です。昭和18年」って言ったら「はぁ、橋幸夫と一緒だ、若いね」って言うの。
降りてお金払う時、「お釣りいりません。本当は昭和6年の未ですよ」って言ったら、「へぇぇ~!!」って驚いて(笑)。あの運転手さんにまた会いたいな。
浅草の観音さまの境内、新奥山の入口に「喜劇人」の顕彰碑がある、と聞く。
――そう、立派な石碑がドーンと立ってるでしょ。喜劇役者やなくて喜劇人として。あの格調高い字は川端康成先生ですからね。その裏に、亡くなった喜劇関係の人の名前がずらっと彫られてますよ。
榎本健一、柳家金語楼、曽我廼家明蝶、三木のり平、由利徹とかね、ずっと下のほうに森繁先生の名前もあって、だんだん残りがこんな少しになって、僕も入れてもらいたいけど、まだ生きてるでしょ。
誰かが亡くなって先にここへ入ったら別の石に入らなあかん。僕はどうしてもこの僕が憧れたスターさんの中に入りたいと思ってね、そう言い続けていたら思いが叶って、もう入ってますから、今度浅草行ったら見てください。
崑さんは最近、『93歳、崑ちゃんのハツラツ幸齢期』という本を出した。高齢期を幸齢期に変えるヒントが満載という。
――そう、今が一番幸せですよ。それで「幸齢期」なんですわ。
卒寿を超えてこう言い切れる人がどのくらいいるだろうか。崑さん、ますますお元気で。