そうこうするうちに……
そうこうするうちに、なぜか高速道路へ入った。高速を使うような距離ではなく、どんなに道が混んでいても30分程度で着くような場所だったのだが、もう40分以上が経過していた。「高速使うようなところじゃないはずだけど」と声をかけたが、運転手は「おかしい、おかしい」と繰り返して慌てるばかり。そのうち千葉方面という標識が見えたので、高速を降りるように促し、怖くなって近くの駅でタクシーを降りた。
そのタクシー運転手は、恐らく認知機能が低下し、カーナビをきちんと読めなくなり、間違えたときに引き返す判断力なども低下してしまっていたのだ。よく通っているような道で迷ったり、パニックを起こしたりするのは認知症の初期症状だ。認知症になると運転はできても、カーナビの入力を間違えたり、道に迷ったり、お釣りを間違えたりしやすい。
認知症は、認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしている状態を指す。実際にはすでに仕事や日常生活に支障が出ていても、本人や家族がそれを認めず、認知症と診断されていないケースは意外に多い。
それ以来、私は、運転手が認知症ではないかと感じたら、何か理由をつけてすぐにタクシーを降りることにしている。見過ごされているだけで、すでに日本国内には、未診断認知症患者予備軍がかなりいるのかもしれない。この先、認知症の人が調理をして火事を出したり、逆走する車による事故に巻き込まれたりするケースは、間違いなく増えるだろう。