人生相談をサイエンスの視点で

そんな私が、皆さんから寄せられた人生相談にお答えしたのが本書です。人生相談は、回答者が自らの経験に基づいて答えるものですが、私は会社勤めをしたことがなく、学者としても本道から外れています。

そこでサイエンスの視点で相談に回答し、第三者が読んで楽しめるものを目指しました。たとえばコップは横から見ると台形ですが、上から見れば円です。ひとつの物ごとも、角度を変えれば違う見方ができる。

「あなたの見えていない裏側がありますよ」と想像が広がるよう、答え方を工夫しました。

失敗が怖くて挑戦できない。カーッとなる自分を抑えたい。不倫の恋しかできない。雑誌連載時には、読者や著名人からいただいた幅広い相談に答えました。

人はさまざまな悩みを抱きますが、なかでも社会通念とズレを感じた時、「これで大丈夫なのか」と確認したくなるようです。多くの方が規範に誠実であることに驚きました。

特に、嘘をついてしまうという読者の悩みは興味深かった。皆さんは「嘘をついてはいけない」と思い込んでいますが、果たして本当にそうでしょうか。

つまらない話をする上司に「さすがですね」と感心してみせるのも、お化粧で元の顔を覆い隠すのも、ある種の嘘。小説や映画のように、みんながお金を払ってでも楽しみたい嘘もあります。

つまり、嘘をつくのもひとつの才能。この相談者が、小説家や脚本家を目指していたらヒットを狙えたかもしれないのに。ですからこの方には、嘘をつくのをやめるのではなく、創作活動を始めることを勧めました。