欧米では「隠れた被害者」
一方、欧米諸国では加害者家族支援が積極的に展開されています。とくに注目すべき例として、イギリスで1988年に設立されたNGO団体のPOPSがあります。警察などの行政機関と連携して、事件発生直後から総合的な支援を行い、大きな成果を上げています。
なぜ日本と欧米で差が生まれているのかといえば、その背景にあるのは加害者家族に対する社会の見方の違いです。欧米では、加害者家族をhidden victims(隠れた被害者)として認識し、支援を必要とする存在として理解されています。
しかし日本では、「世間体」という独特の概念に強く縛られ、加害当事者とその家族が連帯責任を強いられる傾向が根強く残っています。また、「親の育て方が悪かったから」という子育て自己責任論や、「妻が夫の性欲のケアをしていなかったから」といった性欲原因論をベースとした価値観が、いまもなお加害者家族を二重三重に苦しめています。
この状況を改善するためには、加害者家族も「支援を必要とする存在」であるという認識を社会全体で共有していく必要があります。
※本稿は、『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(著:斉藤章佳/朝日新聞出版)
あらゆる犯罪のなかでも、とくに世間から白眼視されがちな「性犯罪の加害者家族」の悲惨な“生き地獄”とは?
家族が償うべき「罪」はあるのか?
1000人を超える性犯罪の加害者家族と向き合い続ける専門家が、支援の現場からその実態を報告する。