(写真提供:Photo AC)
数ある犯罪のなかでも、とりわけ性犯罪の加害者家族は世間から白眼視されやすい傾向にあります。そんななか、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳先生は、自身が所属する依存症回復施設・榎本クリニックで、これまで1000人を超える性犯罪の加害者家族と向き合い続けてきました。今回は、斉藤先生の著書『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』から一部を抜粋し、ご紹介します。

日本の加害者家族支援の歴史

性加害者臨床の現場では、家族から支援があること、そして家族も家族会などの支援グループにつながることが、当事者の治療定着率を向上させることがわかっています。しかし、性犯罪に限らず、日本の加害者家族支援は諸外国に大きな後れを取っているのが現状です。

日本で加害者家族の課題が本格的に議論されるようになったのは、1988年の「日本犯罪社会学会」がきっかけです。この学会では、加害者家族について「犯罪の原因としての家族」「更生の場としての家族」「被害者としての家族」という3つの視点から議論が行われました。

2008年には、日本ではじめて加害者家族支援を専門に行う団体として、NPO法人World Open Heartが活動を開始しました。

World Open Heartは、当時東北大学大学院に在学中だった阿部恭子氏によって設立されました。加害者家族の相談や支援はすべて無料。支援の幅も広く、電話は24時間受付で、被害者や遺族への謝罪の同行、住居や就職の支援までボランティアの手で行っています。また、2か月に1回ほど、刑事事件の加害者家族が悩みを語り合う「加害者家族の会」を実施しています。