目下の悩みは、何年続くかわからない費用の工面

それから3年、義母は穏やかに眠り続けている。遺族年金ではまかなえない毎月の利用料の不足分10万円、医療費や訪問歯科の費用など別途2万円ほど、加えて、義母のマンションの管理費4万円を捻出するために、夫は雇用延長で働いている。

「高級ホームではありませんが、ヘルパーさんたちも看護師さんも優しくてケアは行き届いていますね。おかげで、要介護5で寝たきりの義母の状態は安定しています」

ハルコさんの目下の悩みは、この先何年続くかわからない費用の工面と、自分たちの老後。空き家のままにしている義母のマンションを処分するか、自分たちが今住んでいる家を処分するか。とはいえ、相続前にマンションを処分するのは手続きが難しい。夫婦ともども、この先、何年も働き続けられるわけはなく、早めの決断を迫られている。

「義母が亡くなったらマンションを売って、今の家をリフォームして……なんて、捕らぬ狸の皮算用をしていたのですが、すべてなくなりました。夫にとっては、母親は生きているだけでありがたい存在ですから、今の状況がそれほど苦にならないみたいなのが救いです」

休日になると「眠り姫に会いに行ってきまーす」と言いながら、いそいそとホーム通いをする夫に苦笑しながら、「義母の意識がないのはかえって幸せなのかも」とハルコさんは言う。「もし意識があって、言葉も出ない、体も動かせないという状態だったら、自分なら耐えられません。このまま生かしておくのが正しいのかどうかという思いもあります」。

ただ、義母はその存在をかけて、「人生何が起きるかわからない。万一の備えだけはしておきなさいよ」という教訓を遺してくれていると思うハルコさんだ。

 


ルポ・親が長生きするほど人生設計に綻びが……
【1】義母が脳幹出血で意識不明に。介護費用で老後資金が消えていく
【2】母の遠距離介護を交代で担ってきた兄弟が次々に倒れ…
【3】義父にできた44歳年下の恋人。次第に化けの皮がはがれて