鉄子役にやりがい
やなせ先生の奥様・暢さんを中心に朝ドラの企画が立ち上がったことは、もともと聞いていました。私は暢さんにお目にかかったのは、何かの集いで一度だけ。会釈した程度でしたが、役が決まる前から、個人的に取材を受けていたんです。やなせ先生が生きていたらどんなにお喜びになるんだろうと思っていました。
そんな中で、私にオファーがあったことは、本当にうれしかったです。薪鉄子という役名からは、アニメの登場人物「てっかのマキちゃん」を思い出しました。のぶに影響を与えた頼もしい人物で非常にやりがいがあると感じました。
鉄子はハチキンで、正義感にあふれ、恐れずに前に進んでいきます。現代ですら女性が何かをするには大変な部分がまだあるのに、当時、女性がリーダーシップをとり、男性に混じって世に出ていくのは想像を絶する苦労があったはず。
当時の女性政治家の記事を読みましたが、かっこいい颯爽とした雰囲気を感じました。バチッとスーツを着ていたり、赤いマニキュアをしている人もいたり。女性としての色合いを隠すことなく前に出ていく姿はみんなの憧れの的になっていたと思います。
鉄子は、復興を目指すなかで、まず戦災孤児をなんとかするべきだと活動していました。戦争中、教師として過ごしたのぶには子どもたちへの思いがある。だからこそ、鉄子とのぶは響き合うものがあったんでしょうね。
<嵩の恩師役の山寺宏一さんをはじめ、アニメ『それいけ!アンパンマン』に声優として出演する人が続々と『あんぱん』に俳優として登場してきた>
鉄子役はアニメと関係なく、あくまで一つの役として受け止めています。ただ、「『あんぱん』にはいつ登場するの?」と周りがほかのドラマ以上に聞いてくる。発表までは言えないので、「出ない」と答えていました。私の撮影が始まってからもまだ発表されていなかったので、台本には役名だけで戸田恵子という名前は載っていません。
私が演じている様子は、スタジオの外のモニターにも映らなかったので、自分でも不安になるくらいでした。鉄子役での出演が発表になったのは、撮影が全て終わった後。「頑張ってください」と連絡がたくさんきましたが、撮り終わっているので頑張りようがない(笑)。すべてが不思議な感じでした。