多いと数千件の声が

キャスターとして数多くの番組に出演していた鈴木アナ。「ニュース番組での自分の役割は、世の中で起きている最前線の情報を、正確にわかりやすく伝えていくことでした。『あさイチ』は、そうした世の中の情報や話題に対して、『何を感じていますか?』『どうすれば皆さんの生活が良くなると思う?』という視点で進行しています。いろんな方の意見や反響がリアルタイムで返ってくるので、双方向性をすごく感じています」

生放送中に視聴者の意見をチェックする鈴木奈穂子アナウンサー(撮影:本社・油原聡子)

あさイチのホームページには、「番組が大切にしているのは、みなさんの声。放送中にメールやFAXで寄せられる疑問・質問に、時間の限りお答えします」という文章が掲載されている。実際、放送中も、メールやファックスなどで届く視聴者の意見がたびたび紹介される。

「『ちょっと聞いてください!』といった視聴者の方のメッセージを読むことが多いのですが、何か言いたくなったり、吐き出したくなったりする番組なんだなと感じています。そこでみんなが納得する正解が出るわけではないけれど、一緒に考えたり、共感したり。みんなで分かち合い、疑問を一緒に感じて、次の1歩を踏み出そう、今日も頑張ろう!と思ってもらえる番組だと感じています」

生放送中に届くメールやファックスは平均800~900件、多いと数千件にもなる。

「『今日のあさイチ、ちょっと違うんじゃないですか』という意見も大事にしようと、スタッフとの間でも共有しています。新しい視点の意見が入ると番組の雰囲気がガラッと変わる。いろんな人の思いや立場がありますから、自分なりに覚悟を持って選んでいます。スタッフがまずは厳選していますが、多い時で数十通が私の手元に来ます。最終的に選んで読み上げるのは自分なので、責任をすごく感じています」と語る。

最大限にアンテナを張って読んでいるつもりでも、「違ったかも」と思うこともあるという。

「女性視聴者が多いので、夫やパートナーに対する愚痴のような内容も結構届くんですね。私も妻の立場から大いに共感する部分もあったので(笑)、そうしたメッセージを多めに読んだら『夫の愚痴ばかり聞かされて朝から嫌な気持ちになりました』という声を頂き、一方の立場からの声ばかり紹介したことを反省しました。かといって、あまりにも中立性を意識しすぎて当たり障りのない声ばかり紹介するのも違うと思いますし、本当に難しい。けれどそこが面白い。視聴者の方に見守られながらここまでやってきたと思っています」

SNSの発達した今でこそ視聴者の意見を紹介する番組も増えてきたが、『あさイチ』では、16年前の開始当初から、視聴者とのつながりを大切にしてきた。「NHKの中でも、視聴者の声がここまで届く番組はそんなに多くはありません。これからも双方向のやり取りを大事に番組をお届けしていきたいと思っています」と語る。

(川口由貴、油原聡子)

■鈴木奈穂子

アナウンサー。神奈川県出身。2004年にNHKに入局。『おはよう日本』『ニュースウオッチ9』『ニュース7』などを担当し、2021年度から『あさイチ』のMCを務める。

 

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