江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。史実と同様、ドラマ内では、田沼意次の嫡男・意知が佐野政言の手で絶命しました。意次の正統な後継者として異例の出世を遂げるとともに、立場を超えて市中の誰袖や蔦重と交わるなど、視聴者から愛されるキャラクターでもあった意知。演じた宮沢氷魚さんにお話をうかがいました。(取材・文:婦人公論.jp編集部)
ああここで死ぬのか!って
花魁・誰袖とは信用できる相手なのか、それとも疑うべき相手なのか。
ヒリヒリした関係性のときは「好き」なんて考える余裕はなかったと思います。なので、意知については「気付いたら誰袖の虜になっていた」という表現が近いのかも。
中毒性に近いモノが誰袖にはあったのかもしれません。それで自然と誰袖のところに行きたくなる、というか。後半では特別な用があるわけでもないのに一緒にいましたし。
特に肌が触れ合う場面を通じて、「好き」という感情が加速した感覚はありました。それで2人のこれから先の幸せな時間が想像できるようになってきた。ある意味、幸せのピークを迎えてこの先どうなるんだろうって、ドキドキしながら台本を読み進めていて、ああ!ここで死ぬのかって(笑)。
個人的にはもう少し2人とも幸せな時間を見たかったな、とも思いました。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
意知は、心の底から誰袖に惹かれていただろうし、誰袖のおかげで功績を得られたことに、とても感謝している。
でも松前家との件で、大きなリスクを与えてしまった。それに罪悪感もあったりと、様々な感情が入り混じっていたからこそ、大切な相手になった。この世を去る瞬間も、意知は誰袖がこれからどうなっていくのか、本当に心配していたと思います。
誰袖役の福原遥さんとは2回目の共演でした。
誰袖が入る日は、朝から晩まで誰袖の登場シーンの収録が行われることが多かったです。誰袖の部屋を作って、ブロックでまとめて撮って…。
その分、福原さんの負担は相当に大きかったはず。それでもとにかくチャーミングで、そこにいるだけで現場が明るくなる。一緒にいるうち、自然とワクワクしてくるような素敵な方なんです。