その間も仕事はできるだけ続けていた。ミキさんにとって、仕事をしている時間だけが、自分の時間だと思えたからだ。

「唯一の息抜きが、友人に誘われて介護の合間に行った沢田研二さんのライブ。年に一度か二度しか行けませんでしたが、来月はジュリーに会えると思ったら介護も頑張れたんです」

中学生の頃からザ・タイガースのファンで、ジュリーに夢中だった。大人になってからは足が遠のいていたが、ライブ会場にいる間だけは、青春時代にタイムスリップしたような気分になったという。

「まるで初恋の人に再会したようで、うつうつとした日常を忘れられたんです」

踏ん張って、踏ん張ってトータル10年。夫を看取った時は正直ほっとして気が抜けたというミキさん。その心の隙間を埋めてくれたのがジュリーだった。

「最初はライブに通うだけでしたが、コロナ禍でライブが中止になるなか、彼のために何かできることはないかと考えました」