厚生労働省が発表した「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、令和4年度(2022年度)の調査では、65歳以上の高齢者における認知症有病率は約12%と推計されるそうです。そんななか、高齢者医療を専門とする医師・山田悠史先生は、認知症になる人とならない人の差ははっきりと白黒分かれるものではなく、「認知症になりやすい⇔なりにくい」のグラデーションであると説きます。そこで今回は、山田先生の著書『認知症になる人 ならない人 全米トップ病院の医師が教える真実』から一部を抜粋し、ご紹介します。
「高額な自由診療」にはリスクがある
健康食品、サプリメント、脳トレなどといった商品のように、認知症予防のビジネスの多くは根拠に欠け、甘い言葉で宣伝され、販売されています。
もちろん認知症予防に貢献したいという情熱が注がれている部分もあるでしょうが、認知症への不安を抱える方が増え、その不安に乗じてビジネスチャンスを広げようと考えられている結果でもあるでしょう。
今この記事を読んでいるあなたも、そんなビジネスに狙われているかもしれません。そして、この問題をさらに難しく複雑にしているのは、これが医療の世界にも紛れ込んでいることです。認知症予防の文脈で、高額な自由診療を提供するクリニックや施設が存在しているのです。
自由診療とは、公的な医療保険が医療費を負担してくれない、保険適用外の医療サービスを指します。価格や内容は医療機関が独自に設定できるようになっています。一見、最新の医療技術や特別なケアを受けられるように思えますが、保険適用を受けていないのは、その効果や安全性が十分に検証されておらず、厚生労働省の承認を得ていないからです。