医療や介護のプロたちにうまく助けてもらうには

「親が急に倒れた」「圧迫骨折で動けなくなった」「認知症が疑われる症状がひどくなった」など、パニック期にもさまざまなバリエーションがあります。

重篤な病気やケガの場合は急性期病院で手当てし、治療が一段落するとその状態に応じて、回復期リハビリ病院、地域包括ケア病院、療養型病院(介護医療院へ移行中)などに転院となります。

とにかく忙しい急性期病院では、認知症の患者さんに手厚く対処するのが難しい状況です。たとえば認知症をもつ私の祖母が骨折した時、急性期病院に運ばれましたが、「暴れるので24時間付き添いをお願いします」と言われました。

でも私には、仕事のほかに母の介護も、弟の世話もある。すると看護師さんから「それはあなたの家の都合なので、付き添いできないなら連れて帰って」と言われたのです。もしそういう状況に立たされた時は、まず病院にいるMSW(医療ソーシャルワーカー)に相談してみてください。

また医師や看護師にこちらの事情をわかってもらうために有効なのが、写真や動画などを活用すること。医療従事者としての「知識」はあっても、介護の「経験」を持つ人ばかりではありません。普段の様子や困りごとをスマホなどで撮影し、必要に応じて見てもらうと、口頭の説明よりもずっと的確に実情を理解してもらいやすくなります。

緊急医療の後は介護保険の申請に移ります。市区町村の地域包括支援センターに連絡し、主治医に意見書を書いてもらい、役場から認定調査員がやってくる、という段取りです。

介護認定の時も、普段の様子がわかる写真や動画の活用はおすすめ。認知症の方が認定の際に普段よりしっかり受け答えをしてしまい、実際よりも軽い介護度になるのはよくあるケースです。写真や動画で説明を補い、なるべく普段のありのままを見せるようにしましょう。家の中も無理に片付けず、いつもの状態を見てもらうことが重要です。

介護認定が済むと、要介護1以上には専属のケアマネジャーがつきます。適切な介護認定さえおりれば、あとはケアマネが介護を受ける人の状態や家族の希望を踏まえ、ケアプランを提案してくれます。

ケアマネには遠慮せず、どんどんリクエストをし、つらい時には感情に出して訴えましょう。たとえベテランのケアマネでも、口に出さなければ、あなたがどれだけ大変なのかは伝わりません。

ある介護者の方が涙を流しながら「もう死にたい」と訴えたことで、初めてそこまで追い詰められていたことをケアマネが理解し、即座にサービスが見直されたというケースもあります。

また困りごとは普段から具体的にメモしておきましょう。たとえば「家のトイレは一人で行けても、外のトイレで失敗してしまう」とか、「日中はおとなしいが、深夜や早朝に大声を出す」など。箇条書きでよいので書き出して伝えます。そうすることで、要支援2から一気に要介護3になったケースもありました。

要望を伝える時のコツとして、まずあなた自身が困っていることは何か。そしてもしその状態が続くと、何が起こる恐れがあるのか。この2つを土台に、あなたが本当に望んでいることは何かを相談しましょう。

ケアマネはできれば近くの事業所の人を選ぶと便利。よいケアマネの条件は「安(安心)・近(近所)・短(すぐに行動)」です。それでも、いろいろ工夫をしても対応してもらえないとか、どうしても相性が合わない場合は、事業所にケアマネを代えてもらうことも、事業所ごと替えることも可能です。