鎌倉に向かった常世を迎えたのは…

その後すぐに、幕府から招集の命が下ります。常世は僧に語ったとおりに直ちに鎌倉に向かい、ひときわみすぼらしい形ながら、参集した軍兵の中に整列しました。

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するとそこで彼の名が呼ばれ、常世は怪訝な思いで君の御前に進み出ます。

ああ、言葉に違わず良く来てくれたな、と彼を迎えたのはあの晩の僧侶でした。彼は最明寺入道北条時頼。幕府の最高実力者だったのです。

時頼は奪われていた本領を取り返してくれただけでなく、あの夜の松・梅・桜の鉢木の礼に、と上野国松井田莊、加賀国梅田莊、越中国桜井莊を与えてくれました。

常世は大いに喜んで、故郷に帰ったのでした。