佐野左衛門尉こそ「鉢の木」のモデルでは

そこで常世が上野の御家人とすると、敵となり得るのは同国の守護である安達氏です。

有力御家人である安達氏は本拠を上野に置き、高崎に守護所を置いた。安達氏が勢力を伸ばす過程で、佐野氏の所領は奪われたのでしょう。

モンゴルが来襲した頃、幕府には二人の実力者がいました。執権である北条時宗(時頼の子)の舅である安達泰盛と、一の家来である平頼綱です。

両者はことあるごとに対立したと考えられますが、時宗が若くして亡くなると、軍事衝突を起こします。それが弘安8年(1285年)の霜月騒動で、安達一派はみな亡びていきました。平頼綱派の大勝利です。

ところが力を持ちすぎた頼綱は、新しい執権の北条貞時(時宗の子)の脅威となり、ついに討たれてしまいます。正応6年(1293年)の平禅門の乱です。

注目すべきは、頼綱が討たれるとき、彼と運命を共にした側近の一人に「佐野左衛門尉」なる人物がいたことです。この人の系譜や活動は不明ですが、ぼくはこの人こそ「鉢の木」の佐野源左衛門のモデルではないかと思っています。

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