翔子 ダイエット、10キロやせました。散歩、喫茶店やってるから、できない。
泰子 そうだね。翔子は方向音痴ではないし、このあたりのことは隅々までよく知っているから、自転車でどこでも行けます。この町に翔子を託していけば、私が亡き後も安心だけど、「町に託す」って具体的にはどうしたらいいか、いつも考えていたんです。
昔、商店街にあったレトロな喫茶店の皆さんがすごくいい方で、翔子も5年くらいずっと遊びに行ってはぺちゃくちゃおしゃべりしていました。この子のことだから、お店で「いらっしゃいませー」なんて始めちゃって。(笑)
翔子 いらっしゃいませ、おつかれさまでしたー。
泰子 帰る時はそう言ってるね。私、そのお店に翔子を託していこうって夢見ていたんですけどね。一昨年かな、そこが突然閉まっちゃったんです。
その頃はまだここは作品を展示するギャラリーだったのですが、そこから、じゃあ「自分たちで翔子の喫茶店を開こう」という夢が本格的に動き出しました。
翔子 (お客さんが入ってきて立ち上がり)……いらっしゃいませー!
泰子 ついに喫茶店を開店することになって、調理やフロアのスタッフを募集したら、いい方ばかりが集まりました。女性スタッフ5人全員がご近所さんで、翔子のことをよくわかってくれている。
古くからの地域のお知り合いの方や、お隣さんが、お客さんとして来てくれますし。さらにお知り合いの輪が広がって、日々、ご縁を感じます。翔子は私がいなくなったら身寄りがなくなるけれど、ああ、町に託すってこういうことだ、と思っているのです。