翔子 白いのが好き。

泰子 ね、白いカバーかけて、ホテルみたいで素敵だよね、翔子ちゃんの部屋。一般的にベッドは壁際、机は北側、と考えますけどね。これが翔子の感性なんだと思います。

イベントに、ダウン症のお子さんが来てくださると、翔子は「わたしとおんなじだから」と言い、すぐ見つけるのですが、どこまで理解していたのか……。数年前に私、思い切って聞いてみたんですよ。「ダウン症ってどういう人のことだと思う?」って。

取材の場では翔子の前でも何回も口に出していたんですけど、実際に自分のことをどう考えているのだろうと。そうしたら、少し考えてから「書道のうまい人のことかな」って。(笑)

翔子 (顔見知りのお客さんに手を振って)どうぞー。

泰子 障害、ということばも知らないですから。翔子とくっついて散歩しながら、「翔子ちゃん、お母さんもいつか星になっちゃうよね。いなくなっちゃうけど、どうする?」って聞いたんです。翔子の父親が心臓の発作で亡くなってからずっと「お父さまはお星さまになった」って言い聞かせているので、私もそうなるのよ、って。

そうしたら翔子が黙って歩いていて、突然「……お母さま、散歩、どうするの」。散歩なのかーって思いましたよ(笑)。今、目の前のことが大事なの。これが翔子なんですよね。

もう私ができる、机上の作業は全部完了、終活も終わりました。できればお店は続けられる限り、続けてほしい。そして翔子にはずっとこのままでいてほしい。私の願いは、それだけです。

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