「《物理的に距離を置くことが、双方の精神的自立への一番の近道だ》というのが私の実感なの」(吉永さん)

吉永 親というのは、子どもが大人になっても、栄養のある食事を作ってあげたくなるし、帰宅時間が遅いと心配してしまうものでしょ。

離れていれば見えないから考えずに済むけれど、同居していたら子どもの生活に介入してしまうし、子どもは望む反応をしてくれないから、ストレスが溜まるんですよ。だから「物理的に距離を置くことが、双方の精神的自立への一番の近道だ」というのが私の実感なの。

太田 でも、そんな親の心とは裏腹に、子ども側は「一緒に暮らしてあげる」くらいに思っていたりして。互いの《よかれ》という気持ちにズレが生じるのでしょうね。

吉永 私が若い頃は、親から離れたい一心でした。母ひとり子ひとりの家庭に育ち、家を出たいと言おうものなら猛反対にあって。結局、83歳で母が亡くなるまで共依存のような関係で苦しかったから、同じ轍(てつ)は踏むまいと決めた。

ところが息子を産んだ時、私にしか守れない存在だという思いが湧き上がり、母と同じようになるのではと恐怖心を感じて。そこから、「子どもとどう離れるか」を自分のテーマにしたの。