夫から「食事はまだなのか」
そうなると昼前から準備をしなくてはならず、その前に昼食の献立を考え、材料もそろえる必要があります。
また、数品の料理を出せば、調理器具や食器を洗う量も増えます。あらゆる意味で負担が大きくなるのです。
それなのに、夫から「食事はまだなのか」と催促されたりすれば、不機嫌になってしまうでしょう。
また、退職した夫は「妻は家にいるもの」と考えがちですが、奥さんにも用事があります。家事や仕事の合間をぬってサークル活動に参加したり、友だちと外出したりするのです。
夫は、そうした事情を考慮して「お昼は簡単なものでいいよ」とか、出かける奥さんには「気をつけて行っておいで」くらいの言葉をかけたいもの。
定年後の夫婦が気持ちよく過ごすには、相手の事情を思いやる気持ちが大事です。食事に関しては、自分がつくれないのなら「出されたものをおいしいと言って食べる」に徹したほうがよさそうです。
保坂隆さんの連載「人生を楽しむ ほどほど老後術」一覧
出典=『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』(著:保坂隆/中央公論新社)
保坂隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
1952年山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。
著書に『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(PHP研究所)、『精神科医が教える 繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(三笠書房)、『精神科医が教える すりへらない心のつくり方』(以上、大和書房)、『頭がいい人、悪い人の老後習慣』(朝日新聞出版)、『精神科医がたどりついた「孤独力」からのすすめ』(さくら舎)などがある。