農林水産省によると、令和6年の基幹的農業従事者の平均年齢は69.2歳で、高齢化が進行しています。そのようななか、ジャーナリストの山口亮子さんは「すでに始まっている『大量離農』により、農業地図が大きく塗り替わろうとしている」と話します。そこで今回は、山口さんの著書『農業ビジネス』から、農業現場の実情と最新事例を一部ご紹介します。
「一等米」比率が過去最低に
2023年の猛暑の影響で、米どころの新潟や東北を中心に米粒が白く濁ったり割れたりする高温障害が起きました。新米で最も等級の高い「一等米」の比率は、過去最低を記録し、関係者に衝撃を与えました。
その一因となったと考えられるのが、ブランド米の代表格であるコシヒカリが猛暑に弱いことです。コシヒカリは、もっちりした粘りと甘味、粒のつや感などに優れ、おいしい一方、病気にかかりやすくて倒れやすいといった欠点も多い品種です。全国で生産されるコメの作付面積の3分の1を占めます。
日本経済新聞によると、23年の猛暑を受けて17県が「コシヒカリ」の栽培を減らす意向を示しました(「『コシヒカリ離れ』猛暑で進む 24年は17県で減産意向」24年3月10日)。
JA全農にいがたはコシヒカリをやや減らし、代わりに高温に強い品種「新之助」を増産する方針を24年3月に公表しています。とはいえ、高温に強い耐性品種が全国の作付面積に占める割合は、16.2%(2024年)に留まり、動きはまだ鈍いです。