俳優志願が父に認められて
東京に出て小劇場で芝居に打ち込むうちに、テレビドラマのオーディションでチャンスが訪れる。それが第2の転機?
――NHKの朝ドラ『オードリー』ですね。役柄は若い歌舞伎役者でした。時代が映画からテレビに移る過渡期の設定で、その役者がどうやって生きていくかを演じさせていただきました。
蔵之介なんていう芸名だし、歌舞伎出身の俳優かと思われたりしましたね。京都が舞台のドラマで、撮影は京都撮影所でしたから、子どもの頃によく行っていた太秦の映画村での撮影で。これもご縁だなぁと思いました。
この時に脚本家の大石静さんともご縁ができたんです。それが昨年のNHK大河ドラマ『光る君へ』にもつながるわけで、こちらも京都が舞台だし、僕の役はまひろ(紫式部)の夫、藤原宣孝でしたけど、度量の広い、男っぽい役に書いていただいてありがたかったです。
それで『オードリー』出演そのものが第2の転機かというと、そうじゃなくて(笑)。「オードリー」という銘柄のお酒を作ってラベルに使うやら、店に大きなポスターを貼るやらして、父が喜んでくれたこと。そのお酒がよく売れて、実家の売り上げに貢献できたこと。これが第2の転機ですね。
あ、もう「オードリー」は売ってませんよ。その時だけ。うちの酒は川端康成先生の『古都』という作品にちなんで、先生に揮毫(きごう)していただいたラベルの「古都」とか、豊臣秀吉ゆかりの「聚楽第」というのも造ってます。