人の闇もウソも描く
<愛実と銀行員の川原は、親同士が知り合いで婚約に至った。だが、川原は既婚者と不倫しながらも愛実の男性関係を疑い、尾行する。カヲルの母親・奈央は、カヲルと父親違いの弟・勇樹の病気を偽り、カヲルから借金を重ねる。カヲルは嘘がわかっていながらもお金を貸し続けていた。愛実の母親・早苗は、夫・誠治からのモラルハラスメントに耐え切れず、キッチンで隠れてハーブの葉に食らいつき気持ちを抑え込む。決してきれいなだけではない人物造型が物語に奥行きを持たせている>
愛実やカヲルをはじめ登場人物は、「わかるわかる」というようなポジティブな共感ではなく、「ああ、人間ってそういうところあるよね」と思わせるような人物ばかり。私の周囲では、「かえって好感が持てる」という意見が多かったです。
多分、人を好きになるってその人のことをちゃんと理解しないと本当はできない。『愛の、がっこう。』の登場人物はみんなどこかウソや闇を抱えているのがすごくリアル。たいていの場合、そこは描かれないことが多いと思いますが、1人1人に対してちゃんと描いているから観ている人は好きにならざるを得ないんですよね。「ただ嫌な奴というわけじゃないんだ」と見えるので。そうやってドラマを追っていると、観ている方も自然と応援したくなる。
<愛実は過去に交際相手に振られ、ストーカーになってしまい、自殺未遂をしたこともある。カヲルについて知るうちに、ホストではなく1人の人間としてみるようになってきた。「カヲルさんはバカじゃない」という言葉はカヲルの心を揺さぶった>
愛実は過保護に育てられたお嬢様というイメージがあると思いますが、実は言いたいことは言うタイプ。物語が後半になっていくと、相手に対してまっすぐに気持ちをぶつけるという愛実の本質的な部分が良い方向に作用していく。ラストに向かって、愛とは何なのか、愛の終着点を井上さんがどう描くかを楽しみにしています。