3カ国語でのレコーディング
――『渡り鳥の子守唄』も、レコーディングを通して一緒に作り上げたそうですね。裏話を教えてください。
Nozomi Lyn:レコーディングも登紀子さんが全部一緒に参加してくれました。こんなレジェンドの方に色んなことを教えてもらって、とてもラッキーでした。
加藤:あなたが語学が堪能だから、日本語、中国語、英語の3バージョンを作ろうってなったんだよね。中国語は訳詞家さんたちに訳してもらって、英語はNozomi Lynさんが自分でつくってくれたんだけど、日本語は丁寧に指導しました。でも、アクセントもちょっと残したほうがいいなと思って。「こんなにも 遠くまで ただひとり」とか、「捨ててきたの」「飛んで来たの」とか。この辺のフレーズが好きですね。
Nozomi Lyn:日本語が一番難しかったです。「飛びたくて」の歌詞が「飛びだくて」になまってしまったり。
加藤:中国語とか英語は音が響きやすいんだけど、日本語って音になりにくい言語なの。一回声の先生にも聞いたんだけど、喉に負担のかかる言語なんだって。声がこもってしまって響きにくい。日本人歌手としていつも損しているなって思う。日本語で歌うのは大変よ。
Nozomi Lyn:たしかに、声の出方がちょっと変わってますよね。それに3カ国語でそれぞれピッチも違うんです。中国語は高い、日本語は低い、英語は真ん中。言葉によって曲の雰囲気が変わる感じがします。
加藤:日本語は母音がはっきりしてるから。外国語は母音の間に音があるんです。あいまい母音って言うんだけど、間の音があった方が声が出やすい。日本語にはそれがないの。だから。いっそうはっきり響かせて発音しないといけない。強い言葉でもあるのよね。それに、日本では人に歌で訴えるということはしてこなかった。どちらかというと文字で伝える文化だよね。私はやっぱり日本語で歌うのが好きだな。日本語の響きの隅まで発音して、伝えるのがいい。