「ミドリ・スケッチ」(1968年頃)/(C)真琴アート

父が個展を開くようになったのは、50代半ばから。知人に「印刷物になる前の原画を見たい」と言われたのをきっかけに、千葉県佐倉市にある自宅に「真琴画廊」を開いたのです。

どれだけ印刷の技術が進んでも、原画の持つ輝きは格別で――。特に父のように細部まで緻密に描きこんだ絵は、間近で見ていただきたいと思います。

こうして画廊で新作を発表していましたが、やがて東京と関西で定期的に個展を開くようになりました。97年には、東京の弥生美術館で長きにわたる画業の軌跡をたどる初の展覧会「高橋真琴展~永遠の少女たち~」を開催。そのとき、「え、描いている真琴さんって男性だったの?」と驚かれた方も多かったようですね。(笑)

父が「女の子はみんなお姫様」と語り、描いてきた世界はいつしか《マコトピア》と呼ばれ、現代アートとして再評価を受けるようになりました。作品が男性情報誌の表紙に取り上げられたり、世界的ファッションブランドの洋服に起用され、パリ・コレクションに登場したりすることも。

もう一つ、父が喜んでいたのは、文房具やハンカチなどの復刻版が発売されて、もともとのファンはもちろん、若いお客様が増えたことだったと思います。

個展には、ロリータ・ファッションのお嬢さんや、海外のファンの方、親子や夫婦で来てくださる方が増えました。父は皆さんと、喜んでおしゃべりしていたものです。

「ショウワノート・パリジェンヌ」(1970年)/(C)真琴アート