父の絵には、たくさんの動物が登場します。実際にペットを飼うのも大好きで、犬と猫は晩年まで飼っていましたし、ウサギやシマリスも可愛がってよくスケッチしていました。
あるとき、ミニチュアホースは四畳半の広さがあれば飼えるという情報を聞きつけて、「絵の資料にもなるから飼ってみたい」と言い出したことも。さすがに母に反対されて、あきらめたようです。(笑)
出版社を退職して専業主婦となった母と父が、2人で始めた「真琴画廊」。私は25年ほど前から個展の準備を一緒に行うようになりました。母は14年前に他界し、現在は、私が父と立ち上げた会社の代表として活動しています。ただ人手が足りず、今年からは兄が会社に入ってくれました。
というのも、この家には父が残した膨大な数の作品があります。昨年5月に入院するまで父はずっと元気で、「100歳まで頑張る」と言って新作のための画材をたくさん用意していました。
アトリエには、新作の構想メモを整理したファイルがたくさん残されています。今までは私たちが作品を保管し、展覧会などで展示してきました。ただ、設備の面で多くの作品を保管するのは難しく、災害で作品が損なわれる心配もありました。
そこで父とともに考えていたのが、整理した作品をファンの皆さんに所蔵してもらうこと。大きな展覧会があるときは《個人蔵》のコレクションとして、皆さんから貸していただくことも考えています。そうして一点一点が各地に分散することで、遠い未来まで残すことができるのではないか。100年後も愛してもらえるのではないかと思うのです。
「少女の気品、優しさ、清潔感、それでいて凜としたたたずまいを大切に描いている」と語っていた父。そんな《真琴の少女たち》が全国、いえ世界中で愛され続ける。そんな未来を、父もきっと喜んでくれるのではと思っています。

「高橋真琴展」
2026年3月 ART SPACE SKY GALLERY(東京・有明)、12月 阪急うめだ本店(大阪・梅田)にて開催予定
問:アートスペース TEL 03・6379・8885 公式X:@macotonohiroba