江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。ドラマ内では十代将軍・家治がこの世を去りました。田沼意次を側用人に重用するなどして政にまい進してきた家治でしたが、無念の死を遂げることに。演じた眞島秀和さんにお話をうかがいました。(取材・文:婦人公論.jp編集部)
家治を演じて
『べらぼう』については、そもそも蔦屋重三郎ってどんな人だろう、というところから始まりました。加えて、今までの大河ドラマではあまり目が向けられなかった江戸市中の人物、しかも吉原という舞台に挑戦するのか。すごいなって。
演じるのは将軍・家治ですから、基本的に登場するのは江戸城の中。
ですので、スタジオ撮影がメインになるわけですが、その場面を通じて市中との対比となるような、江戸時代を浮かび上がらせるようなシーンを演じられたらいいな、と考えて役に入りました。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
家治については、将棋ばかり指していた将軍だとか、あまり政(まつりごと)に携わらなかった、という説もある中、『べらぼう』での描かれ方は、渡辺謙さん演じる老中・田沼意次と信頼関係を築きつつ、政にまでしっかり目を向けていて。
ドラマで描かれていた以上に、きっと意次からマメに報告を受けていたんじゃないかな。そしてその進め方に納得していたからこそ、意次を強く信頼していた。それで任せるところは任せながらも、将軍として最終的な責任は取る、というような。
実際、そんな上司だったら仕事を頑張ろうって思えますよね? そういった意次との関係性というか、バランス感覚を持った将軍に見せたい、と意識しながら、役を作っていきました。
もっとも印象に残ったシーンにもつながるんですけど、その意識は、「十代家治は凡庸なる将軍であった。しかし、一つだけすばらしいことをした。それは田沼主殿頭を守ったことだ」と思いを吐露した場面に、全て集約していた気がします。