モノに対する価値観

編集部:では、所さんが、モノに対する価値観のベースに置いていることってなんですか? 

所:古かろうが、新しかろうが、自分の生活の中に落とし込めるかどうかって事だね。どんなにカッコいいクルマでも、バイクでも、使えなきゃだめ。私の持ってる、古いクルマやバイクも、実際に使えるように、エンジン、足回り、ミッションは最新のモノに換えちゃってるから。ハンドル重けりゃパワステ付けちゃうし。いわゆる、マニア的な人からしたら、オリジナルになんてことをするのだ! って怒り狂う状態(笑)。だけど運転しづらくて、使えないんじゃ、意味が無い。私の場合、気に入ったクルマやバイクで、ホームセンター行ったり、髪を切りに行ったりするのが生活だから。クルマはメインじゃないんだよね。

他で言うと、古い工具なんかもそうですよ。ドイツ人とアメリカ人の、工具に対する考え方の違いが面白いんで、色々買い集めるようになりましたけど、それを並べてコレクションしてるわけじゃ無くて、100年前の工具だって普通に使ってますからね。生活の中で100年前の物も活用している。で、毎日が充実している訳なんですよね。

所ジョージ
所ジョージさん「何もかも、新しいのが良いって考えない事が大事だ、って言いたいわけですよ」(写真提供:ネコ・パブリッシング)

編集部:一般的には、相当難しそうですが……。

所:そんな事ないよ。価値観って言われると難しく考えちゃうかもしれないね。でも、センスを磨けば、自ずからついてくるよ。じゃ、庭とか公園にある雑草や、木の実をスケッチしてみ。誰でも出来るでしょ? そうすると、どうしても、遠近法とか、位置とか、タッチとか、良く見せようって、学校で習った方法で、修正しちゃうんですよ。そうじゃなくて、フリーハンドで、描き切っちゃう。当然、その過程で、葉っぱがやたらでかくなったり、木の実の曲線がいびつになったり、変な絵になったとする。

そこで、ああ失敗しちゃった! って、やめちゃいけないの。失敗って、勝手に決めない! それは、周りの人から見て、失敗にみえるだけであって、失敗じゃない。失敗と思わずに、これはチャンス! ここから、自分の力でなんとかするのだ! って、描き続けて出来上がった絵は、自分のセンスだけで、できたものなの。なんでもそう。身の回りのものが壊れたら、直ぐに修理に出すとか、買い換えるとかしないで、自力でなんとかしてみよう! と、そういうのが大事。