親子関係を良好に保ちつつ、いつまでも自分らしい暮らしを実現するには、どんな工夫が必要なのか。90代で独居を続ける3人に話を聞くと、そのヒントが見えてきた(撮影:藤澤靖子)
亡き夫の提案で災害・防犯対策も万全
地域の繋がりが支えの一つになっているという点では、千葉県市川市の今橋清子さん(93歳)も少し似ている。
「どうぞ召し上がって。すぐ近所にある、フランス人の方がやっていらっしゃるとてもおいしいお店のクッキーなんです」
上品な物腰と言葉遣い。肌つやと滑舌の良さは、90代とは思えない。こぢんまりとした室内は、派手ではないがセンスのよい調度で飾られ、6年前に亡くなった夫の仏壇の前には美しい花が生けられている。
「このお花は近所の方が持ってきてくださったんです。いつも申し訳ないからいいのにと言っても、ご主人に持ってきてるのよ、なんておっしゃって(笑)」
今橋さんが夫と市川市にやってきたのは、六十数年前。東京まで電車で30分ほどのこの場所も、当時はまだ緑豊かでのどかな町だった。建設会社に勤める夫と職場結婚した今橋さんは、この地で一男一女をもうける。子育てを終えた後は自宅で学習塾を開き、多いときは200人ほどの生徒を抱えていた。