令和の若者<Z世代>について、「会社をすぐ辞める」「タイパ重視」といったイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは「実は、メディア発信による既存イメージの多くが、彼らの実像を見えにくくし、『昭和・令和世代』との大きなギャップを生んでいる可能性が、指摘され始めている」と話します。そこで今回は、牛窪さんがZ世代のナゾに迫った著書『Z世代の頭の中』から一部を抜粋してお届けします。
未来の不安に「先回り」と「二刀流」で備える
06年、私と弊社スタッフが約2年かけて、当時20代前半(現30代後半)の若者たち100人にインタビュー調査を行なっていた際、何度も耳にしたのが、次のセリフでした。
「ビールって、飲んでナンになるんスか?」
当時、大手ビールメーカーは「なぜ若者が、ビールを飲まなくなったのか」と悩み始め、弊社に調査の依頼が入りました。「飲んでナンになる?」に、当初は首をかしげた私たち。弊社の女性スタッフの多くはお酒が大好きだったこともあり、「美味しいから飲むに決まってるじゃないですか」「夏場、そば屋さんで飲むビールが格別なんですよね」などと盛り上がりながらも、なんとか彼らの本音を聞き出そうと、「ラダリング(laddering)」と呼ばれるマーケティング手法、すなわち「はしご(ladder/ラダー)」をのぼっていくように「なぜそう思う?」を繰り返し、対象となる若者のニーズを深掘りしていきました。
すると彼らは、口々にこんなふうに答えたのです。
「だって飲みすぎて記憶なくしたら、周りに迷惑かけちゃいますよね」「調子にのって2次会、3次会まで行ったら、終電なくなってタクシー代かかるし」「二日酔いになって翌日仕事でミスしたら、周りに『使えない奴』って思われるじゃないですか」