感染拡大の影響は確かにあった。ダイヤモンド・プリンセス号での集団感染が報じられて以降、花見シーズンの予約が次々にキャンセル。それ以降の見通しも立っていない。

「07年ごろはすごく景気がよかった。会社の業績には私もずいぶん貢献してきました。当時の蓄えは十分にあるはずです」(狭山さん)

狭山さんの目はすでに次のステージを見据えていた。

「『終わらない宴会はない』――中国のことわざです。いつかお別れのときは来る。でも、会社とはあまりいい別れ方ができなかった。同時に解雇された日本人社員のことも心配しています。65歳までは旅行業界で現役を続けたい」(狭山さん)

 

コロナで明らかになる苛酷な労働状況

政府は外国からの移住労働者に対し、「専門的、技術的分野の労働者は可能な限り受け入れる」ものの、「単純労働に従事する意図を有する外国人の入国は認めていない」との姿勢を取り続けている。一部の業界で人手不足が進むなか、政府は財界の要望に応え、「外国人技能実習制度」を創設した。

「外国人労働者への人権侵害はあちこちで起きている。コロナは一つのきっかけに過ぎません」

POSSE外国人労働サポートセンターの岩橋誠さんは19年4月の開設以来、相談を受けてきた。

「北関東で窓枠を作っている大手企業の下請けで働く日系フィリピン人。時給は1150円です。その会社は『うちは正社員は日本人だけです』と明言しました。4分の1近い外国人はみんな非正規。あからさまな差別です。

通訳として働いているフィリピン人が会社にパスポートを奪われているケースもあります。横浜市の行政書士事務所が仲介している案件ですが、会社は『パスポートを返したら、逃げちゃうでしょ』と強弁しています。

もともと手取りは最低賃金レベル。月10万円ちょっとです。パスポートが返ってこないので、辞めたくても辞められない。国際機関の基準ではこうした働かせ方は『強制労働』に当たります」(岩橋さん)