その後、18年に東京都が行った調査では都内に4000人。10年間で2倍になっている。この間、路上生活者は減少を続けている。

「失業して路上で寝る人は減っているけど、ワープアでネカフェに泊まる人は増えています。彼らの平均月収は11万円程度。生活保護を受けるには収入が高い人も多い。半数は20〜30代。彼らに対応するセーフティネットはありません」(稲葉さん)

コロナの影響で一部の企業は新卒の「内定切り」に踏み切り始めた。東京大学大学院教育学研究科の本田由紀教授は、

「団塊の世代が定年退職を迎えた2013年ごろから新卒の労働市場は売り手市場と言われてきました。それでも足りないので、技能実習生など海外からの労働力で補ってきた。今やその新卒ですら『内定切り』が発生している状態です。感染症への対応で経済が停滞するなか、より不安定な非正規やフリーランスの方々も切られ始めました」

と分析する。あまりにも不安定な非正規労働者の働き方。どのように改善すればいいのだろうか。

「従来型の正規と非正規の中間にあるような働き方、『ジョブ型無期雇用』が望ましいですね。日本の正社員は『メンバーシップ型』といわれ、組織の一員としての身分を与えられるという性質が強い。一方、非正規は正社員よりも仕事の範囲が決まっているものの、いつでも切られてしまう。この二者に分断するのではなく、両者のいいとこ取りが理想です。仕事の範囲は一定程度定まっていながら、安定して雇用される。そんなジョブ型無期雇用を提唱してきました。一部ではすでに実現しています」(本田さん)

〈後編につづく