3代将軍・家光の絵を見て感じたこと

ここで忘れてはならぬのは、人として優秀かどうかと、将軍としての業績が比例しない、という点ですね。

現代のリーダー論でもしばしば取り上げられることですが、社長は下から叩き上げた人が良いのか、筋目正しいぼっちゃんがいいのか。人の上に立つ人にはどんな才能とか資質が必要なのか。世襲は是か非か…。

そういった議論とも大いに関連があるこの問題ですが、甲論乙駁、だれもが納得する見解はないんでしょうね。

3代将軍家光の絵が平成の世になって発見されました。

その絵を見たときに、ぼくは「ああ、家光は(個人としては)優秀とはいえないな」と思いました。というのは、絵があまりに下手くそだったから。

いや、デザイナーさんからすると高得点なのかもしれませんが、ぼくら普通の人が見ると、子どもが書くような、凡作なのです。

うまく絵を描きたい、と思えば、うまい人の絵をまねるじゃないですか。たとえば鷹を描くとして、生きた鷹を写生するだけでなく、上手な人はどういうふうに描くのか、と鷹の絵を見て描き方を模倣する。

「学ぶ」は「まねる」から始まる、とよく言います。家光にはそうした学習の発想がない。もちろん天才ならば、今までにない鷹を紙の上に一から産み出すかもしれませんが、多くの場合は基礎がないと、伸びないでしょ。