Q. 飼い主も年を重ね、「老老介護」になったらどうすれば?
A. 自身が年齢を重ねても、ペットの介護を最初から諦めず、さまざまなサービスを段階的に活用することをおすすめします。まずはペットシッターや犬猫のデイケア施設等を利用。たとえば週の半分は老犬をペット用ショートステイに預けて、半分は家で介護するという方法も。自分一人でできないところはプロの手に任せる。基本的に人間の介護と同じ考え方でいいのです。地域にどんなサービスや施設があるか調べてみてください。

また、飼い主さんが要支援や要介護状態になった場合でも、周りの方がご本人とペットを引き離すのは少し待ってください。離れ離れになったとたん、飼い主さんがガクッときて弱ったり、認知症が進んだりというケースをたくさん見てきました。可能ならば、なるべく飼い続けられるように周りがサポートする態勢を作ってほしいと思います。

ただしヘルパーさんやケアマネジャーさんなどの介護職の方は、担当している方のペットの世話をしてはいけない決まりになっています。だから動物病院と連携して、連絡係になってもらうといいですね。動物病院へは、できれば1ヵ月に1回ぐらい、飼い主本人が定期検診へ連れて行く。本人が行けない状態なら、往診を利用しましょう。往診を行っている動物病院はけっこうあります。

世話をするのがどうしても難しくなったら、動物用の介護施設に入れることを、獣医師と相談して判断する。そのほうが急に離れ離れになるより、飼い主さんのためにも、ペットのためにもいいと思います。
獣医師のホンネ

高齢者にこそ老犬・老猫を

ある年齢以上になるとペットを飼うことを諦めてしまう人が増えますが、これは非常にもったいない話。高齢の方でも工夫次第で飼うことはできるし、それによるメリットはたくさんあるんですよ。極論を言えば、何歳でもペットを飼って大丈夫なのです。

ただし、どんな動物でもOKというわけではありません。足腰の弱い高齢者に、散歩が好きなゴールデンレトリバーや、やんちゃなハスキー犬は難しい。小型でも手がかかる子はいますから、品種や個々の性質をよく理解して。また、飼い主の生活環境や健康状態によって相性のいい動物も変わってくる。飼う前にご本人と動物をコーディネートできる獣医師に相談するのが理想です。

そのうえで中高年の方にお勧めしたいのは、成犬・成猫を飼うこと。生まれたばかりだと将来どのくらい大きくなるかや性格が予測できません。「こんなに元気な子に育つとは思わなかった」と高齢者の方が動物を手放したり、思わぬ事故が起きたりするケースはたくさんあります。ですから保護動物などのなかから成犬や成猫を迎えるというのも、ぜひ選択肢のひとつにしてみてください。

年を取った動物と人間のお年寄りは、本当に相性がいいのです。仙人のように悟り切ったような老犬や、おっとりした老猫などに、とても癒やされますよ。

獣医師に聞く「ペットを飼うなら知っておきたい『いざという時』の心構え」
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