私は大学のゼミや、国会審議を紹介する国会パブリックビューイングの交流会でも、このレッスンを行ったことがあります。1人では思いつかない返しの言葉を得たことで、参加者の意識がみるみる変わっていくのを何度も見てきました。
とはいえ、このようにして「返しの言葉」を手に入れても、自分自身がゆらいでいては、言い返せません。同時に己を肯定することも必要です。あなたを認め、持っている力を発揮できるように元気づけてくれる、「灯火の言葉」を集めてみましょう。たとえば、「あなたの作る煮物はおいしい」「いいアイディアだね」など、人に言われたちょっとしたことで構いません。
自分がやったことを誰かが認めてくれた、褒めてくれた、喜んでくれた。その折々で人からかけられた言葉を思い出して小さな自信を積み重ねていけば、いざというときに言い返す勇気も生まれてくるでしょう。
そのつもりがなくてもハラスメントに
呪いに対抗する言葉を持つことは、すなわち生きる強さを身につけることです。その強さを持たない人たちが、世間からの言葉が原因で、不幸な事態を招いてしまったケースもありました。
児童虐待事件を取材するルポライターの杉山春さんは、世間の「母親とはこうあるべき」という見方に縛られた母親たちが、「自分にはできない」と言えないまま、わが子の虐待に至ってしまったと著書で書いています。
同時に、自分が無意識のうちに呪いの言葉を口にしてしまっている可能性もありますから、気を付けたいものです。特に家族は、たとえ抑圧する意図がなくても、上の立場から発する言葉で相手を縛ってしまいがちです。