昔から髪型をあまり気にすることがなかったというマリさん。高校生の頃に一度だけ、自分の嗜好性を髪型で主張したことがあったと振り返ります。教師から怒られてしまったという、その髪型とは――。
もの言う髪型
もし自分が宇宙人だったとしたら、地球に生息する生き物を見て何と思うだろう。そんなことを子供の頃はよく考えていた。魚たちの合理的な流線型はかっこいいと感じるだろうし、繊細なガラス細工のような羽を持ったトンボやメタリックグリーンの甲虫を見て、なんて機能的で美しい生物だと感激するはずだ。もふもふの毛で覆われた柔らかい猫を見て、自分の星に連れて行きたいと思うかもしれない。
では人間はどうだろう。直立二足というバランスの悪い縦長の姿勢で、しかも頭のてっぺんにだけ集中して毛が生えている。あとは、ほとんどがつるりとした無毛の皮膚。見慣れてしまうと何とも思わないが、子供の頃の私にはそんな人間の姿がちょっと滑稽に思えることがあった。
コンサートの前の夜、母が頭にカーラーを巻いているのを見て妹とゲラゲラ大笑いをしたことがあったが、人間の執拗なまでの髪へのこだわりには当時から疑問を感じていた。
仕事の現場へ行くとマネージャーから頻繁に、「マリさん、髪の毛がもじゃもじゃです」「ボタンが掛け違いになってます」と注意をされる。それでも子育てのために社会的生活を送っていた頃は、身嗜みにも気を配っていたし、髪型にも意識を払っていた。
ただ、もともと私は絵画の創作というイメージの世界を生きてきたので、作品を手がける自分の見てくれには執着がない。最悪、優秀な素材とデザインの服の力を借りれば、髪型も含め、私のガサツさがうまいことカバーされるのも知っている。