工場生産の特徴

工場生産は、大量生産が可能である点が最大の特徴で、自動化された機械や標準化されたプロセスを用いることで、一度に大量の製品を効率的に生産できます。

例えば、シャツを作るとしましょう。生地を裁断する際には、生地の上に効率よく各パーツをくり抜けるようにパターンを載せていき、生地に無駄がでないようにコンピュータが落とし込んでくれます。この仕組みをCAD・CAMと呼び、多くのアパレルメーカーが使用しています。最近は、AIを利用することでもっと効率化が可能になります。

『アパレルビジネス』(著:久保雅裕/クロスメディア・パブリッシング)

ちなみに業界では生地に上手くパターンを落とし込むことを「取り都合」という言葉で表します。「取り都合を考えるとここに袖を置いた方が良いじゃん」みたいな感じです。

そして、パターンに沿って自動裁断機が生地をパーツごとに切り分けていきます。カッターの歯で切るものやレーザー、ウォータージェットで裁断するものなど自動裁断機にも様々あります。この工程でも多品種少量生産の場合は電動ハンドカッターを使うこともあります。

そして前身頃と後身頃を縫う人、袖を縫う人、袖を身頃に縫い付ける人などパーツごとに流れ作業で形を作っていきます。さらには、プレスをかける人、畳む工程、袋詰めと分業で進行します。このため、コストが低く抑えられ、市場の需要に迅速に応えることが可能です。また、生産工程の標準化により品質が均一に保たれ、消費者に安定した製品を提供できます。

しかし、工場生産にはいくつかの欠点もあります。

まず、デザインや製品の個性が失われやすい点です。大量生産品は画一的なデザインになりやすく、ユニークさを求める消費者のニーズに十分応えられない場合があります。また大量生産に伴う在庫過剰や廃棄物の増加は、環境負荷の増大を引き起こしています。さらに、工場設備の初期投資が高額であるため、新規参入が難しい場合もあります。デザイン変更や少量多品種生産には素早く対応しづらい点も課題として挙げられます。