どのような人でも、少なからずファッションに惹かれる面を持っているものです。その心理について、ファッション・ジャーナリストの久保雅裕さんは「トレンドや自己表現の手段としての服の力を借りて、自身に幸福感をもたらすツールであることを無意識に感じているのだろう」と語ります。そこで今回は、久保さんの著書『アパレルビジネス』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。
工場生産とハンドメイド
ラグジュアリーメゾンが老舗の刺繍工房などクラフトマンシップの強いアトリエや工房を買収しているというニュースが増えました。
何故なのか分かりますか。それは富裕層を対象にした高級メゾンにとっては、工場生産で作られる大量生産できる商品では、顧客を満足させることも高い価値を提供することも難しくなったということを意味しています。つまりハンドメイドの手作業による工芸要素を盛り込まないと付加価値を上げられないのです。
一度は忘れかけ、廃れそうになった工芸が見直され、日の目を見る時期が来たとも言えるでしょう。
さて製品の生産方式は主に工場生産とハンドメイドの2つに大別されます。それぞれの方式は、生産規模や効率、品質、環境負荷といった面で異なる特性を持ちます。