相続はお金の問題ではない
これまで遺産相続にまつわるたくさんの相談を受けてきましたが、最後には、物やお金の問題ではなく、意地のはりあいになってしまう事例が多いと感じます。きょうだい間のトラブルには、自分が親にどれだけ愛されていたかの証がほしいという気持ちや、過去の感情のもつれが潜んでいるからです。
例えば「うちはなんでも長男びいきで、小さい頃から妹の私は扱いが二の次。お兄ちゃんは他県の大学に行かせてもらったのに、私は高校までしか進学させないと言われ、地元で結婚するしかなかった。それなのに、遺産までお兄ちゃんが多く取るのは欲張りじゃないの」「お母さんの介護を最後までやったのは私。その苦労代は相続に加算されるべきでしょ」などなど。子どもの頃から積み重なったうっぷんが噴き出すのが相続。
昔、ああ言われた、こう言われた、こんな扱いを受けたなど、細かいエピソードが話し合いの場でどんどん出てくるのです。相続のグチや争っているきょうだいの悪口をほかの親戚に言いふらして、自分の立場を有利にしようとするケースもあります。感情のもつれがあると、相続する金額の大小にかかわらず、揉め事に発展しがちです。
「自分が死んでも、うちの子たちは大丈夫」と思っている読者の方もいらっしゃるかもしれませんね。すでに遺言書を用意しているならいいのですが、トラブルの一因には、親が遺言書を書いていなかったことも挙げられます。親のお金は親のもの。だからこそ、遺言書で自分の意思を伝えるのが、親の務めだということを覚えておきましょう。