(写真提供:JAMSTEC)
(1)中嶋さんはこの有人潜水調査船「しんかい6500」に乗船し、水深6000mまでの海底を調査した
(2)調査時、昭和59年製造のハンバーグのパッケージを発見
(3)歯磨き粉のパッケージもきれいなまま見つかった。冷たい深海に沈んだプラスチックごみはほとんど劣化していなかった
(4)洋上に浮かぶプラスチックかご。遠洋に出ると、しばしばこうした光景に出くわす

人体への影響は未知数

海洋などの自然環境に漏れ出すプラスチックには、どのようなものがあるのだろうか。

「プラスチックごみはサイズによって3つに大別されます。ペットボトルやビニール袋、人間が普通に手で持てるプラスチック片などの大きなものを『マクロプラスチック』、5ミリ以下のものを『マイクロプラスチック』、正確な定義は決まっていないが1マイクロより小さいものを『ナノプラスチック』と呼ぶのです。

このうち最近特に注目されており、海洋汚染の中でもっとも研究が進んでいるのが、マイクロプラスチック。魚など海の生物が誤食してしまいやすいサイズです」と中嶋さん。

さらに、発生源によって「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」に分けられる。

最初から5ミリ以下のものが「一次」で、工業用研磨剤などに使用される小さなビーズ状のプラスチック原料や、プラスチック製品の中間原料となる樹脂ペレットなどがそれだ。

日常生活の中にも一次マイクロプラスチックは多く存在する。洗顔料や化粧品に入っているスクラブ粒、ラメなどがそれにあたる。プラスチック素材を含んだ化粧を洗い流すたび、下水を通って海に流れ込んでいるのだ。

一方「二次」とは、大きなプラスチック製品が紫外線や熱などの外的要因により、劣化・微細化し砕けてできる、ありとあらゆるものを指す。実は洋服の化学繊維もプラスチックの一種で、洗濯するたびに剥がれ落ち続ける。海洋で見つかるのは圧倒的にこの二次が多い。

「さまざまな形態の中でも、使い捨て容器が環境中に漏れ出すプラスチックごみの多くを占めています。たとえば世界中の海岸で拾われたごみのトップ10を見ると、2位が食品包装、3位がペットボトル、4位がボトルキャップ、続いてレジ袋、プラ袋と、1位のタバコの吸い殻以外は全部がプラスチック。

国連が19年に発表したデータによると、世界中のプラごみの内訳の47%が容器、包装などのパッケージングでした。これに使い捨てフォークやストローなどを入れると、半分を超える。とにかく使い捨てプラをどうにかしないと、この問題は解決しないというのが専門家の共通認識です」