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軽くて丈夫で安価なプラスチックは、私たちの生活に欠かせないものとなっています。しかしこれらが海に流出し小さな粒となり、生物の体内に取り込まれていることは、それほど知られていません。すぐには健康被害がないけれど、将来、どのような影響があらわれるのか。手遅れになる前に私たちができることとは──(取材・文=古川美穂)

このままでは、魚よりごみの量が多くなる

水深6000メートルの深海に、さまざまなものが落ちている。昭和59年製造と書かれたレトルトハンバーグの袋。ラベル表示がはっきり読み取れる古い歯磨き粉のチューブは、生物にかじられた跡がある。

NHKのニュース番組がこの衝撃的な映像を流したのは、2019年秋のこと。

「プラスチック汚染を調査するため、19年の8月から9月に『しんかい6500』という潜水調査船で房総半島沖に潜ったときに見つけたのが、これらのごみです」と言うのは、海洋研究開発機構の研究員、中嶋亮太さんだ。

近年、プラスチックによる海洋汚染に世界中の注目が集まっている。

2010年時点の調査では、世界で年間800万トン以上のプラスチックが海に流れ出ていると推定されていた。イメージとしては、大型ダンプいっぱいのプラスチックを1分ごとに海に投げ入れているようなものだ、と中嶋さんは言う。

しかもその量は年々増えている。

「プラスチックの大量生産が始まったのは1950年代。安い、軽い、丈夫という利便性が広く受け入れられ、爆発的に生産量が増えました。アメリカを中心に『使い捨て』の文化が生まれ、好景気を背景にして大量生産・大量消費の時代に入ると、プラスチック生産はさらに加速します。この勢いは今も衰えていません。

増加は年率で5~7%ぐらい。今のペースで増え続ければ、2050年までに年間製造量は330億トンになると言われています。2010年時点で海に流出するプラスチックごみは製造量の約3%と言われていますが、仮に330億トンの3%が海に漏れ出ると2050年の海のプラスチック量は約10億トンです」

プラスチックは木材などの天然有機材料と違い、生物によって分解できない。完全に分解されるまでに、理論上では数百年以上かかると考えられており、実際どれぐらいかかるのかわかっていない。一方、海にいる魚類の全生物量は、約8億トン。このままいくと、2050年には海の中で魚よりもプラスチックの量の方が多くなってしまう計算になる。