葛西臨海水族園の展示の様子。日本からは、1分間にこれだけの量のプラスチックごみが海に排出されている(写真提供:葛西臨海水族園)

 

“断る力”でプラごみを減らす

ではプラスチック汚染を止めるには、どうしたらいいのだろうか。

たとえば東京都江戸川区にある葛西臨海水族園では、プラスチックごみを少しでも減らすため、使い捨てプラスチック製品の削減に取り組んでいる。園内のレストランで提供するプラスチック製のストローやスプーン、フォークなどはFSC認証(「適切に管理された森林」の認証を受けた森林から生産された木材製品)を得た紙製に切り替えた。

また展示エリア「東京の海」にある「東京湾の運河」水槽では、20年ほど前から、空き瓶や洗剤の袋、弁当の容器などの生活ごみを入れて、身近な海の状態を再現。そのごみを昨年からペットボトルに替えた。日本から排出されるプラスチックごみをペットボトルに換算して、1分間にどのぐらいの量が海に流出しているかわかるように、展示を始めたのだ。

「環境問題への取り組みは、施設によって差はありますが、教育施設の役割を持つ水族館として、地球環境のことを伝えていかなければいけない。中でもプラスチックの海洋汚染は、目をつぶることのできない問題だと思っていますので、お客様へどのように伝えていくかを含めて、試行錯誤しながら取り組んでいます」と、同水族園の堀田桃子さんは言う。

人々の関心の高まりにつれ、最近は製造業などの企業でもプラ削減に取り組むところが少しずつ増えてきた。私たち個人にもできることはたくさんある。有効と言われるのは、削減(Reduce)、再使用(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rだ。

前出の中嶋さんは、その中でも取りかかるべき優先順位があるという。

「実は日本では、サーマルリサイクルといって、回収されたプラスチックのほとんどは焼却に回されています。ですから、3Rの中ではリサイクルや再利用よりもまず削減、もっといえば、個人レベルでは削減よりも『断る』(Refuse)ですね。ストローやレジ袋、使い捨てのお手拭きなどを、いらないと断る。そして不要なプラスチック製品をなるべく買わないようにする」

今はエコバッグやステンレス水筒も、軽くてセンスのいいデザインのものがたくさん出回っている。

家の中でもキッチンは特に「脱プラ」しやすい場所だ。食器洗いのスポンジをやめて木綿の布巾やヘチマを使う。生ごみを入れるポリ袋の代わりに新聞紙で簡単なごみ箱を作れば、ごみの水分と臭いが取れて一石二鳥だ。お気に入りの布と蜜を使い、アイロンで溶かしながら作る蜜ラップは、水で洗えて繰り返し使えるという。

中嶋さんは研究のかたわら、ネットで「プラなし生活」というサイトを運営している。プラスチックを極力使わない、お洒落でエコなアイデアが満載なので、参考にして楽しみながらトライしてみるのもいい。

一人ひとりの力は小さいが、多くの消費者が求めれば企業が変わり、多くの国民が求めれば国も変化する。まずはできることから少しずつ始めたい。