仕事の意味づけと価値観との接続
とはいえ、私たちは日常に追われがちです。目の前の山積みになった仕事に追われ、「モチベーションなんて言っていられない」というのが本音でしょう。実際、新入社員だった私もまさにそうでした。そんな私の仕事への向き合い方が、ある一言で劇的に変わったときのことをお話しさせてください。
フロントで働いていた頃のことです。夜勤の業務に「朝食券のスタンバイ」という、正直に言うと地味で退屈な仕事がありました。
翌日来館予定の数百名のお客様のリストとにらめっこしながら、連泊や複数人で宿泊される方を一人ひとり探し出す。朝食券の必要な枚数を確認して、専用の封筒に丁寧に封入する。そして小さな付箋紙にお客様のお名前を1つずつ手書きして貼り付ける。
「誰でもできる作業だなあ……」
私はそんなふうに思いながら、半ば機械的にその作業を繰り返していました。むしろ、つまらない仕事だとさえ感じていたのです。
そんなある夜のこと。隣で作業をしていた先輩が、何気なくつぶやくように私にこう言いました。
「大野ちゃん、この朝食券もお客様の手元に渡れば、帝国ホテルの1つの商品なんだよね」
その瞬間、私の頭の中で何かがパチンと音を立てました。
「え……? 商品?」
何気なくつくっているこの朝食券セットも、帝国ホテルの大事な商品。そんなことに全く気づけていなかった自分に愕然としました。
すると不思議なもので、急にやる気が湧いてきたのです。