彼が舞台に取り入れていた「東京節」「私の青空」「ノーエ節」といった歌は、みなさんもご存じではないでしょうか。「♪ラメチャンタラ ギッチョンチョンデ パイノパイノパイ」と歌う「東京節」なんか面白いよね。若い方は「ラメチャン」って何だかわからないかもしれない。でたらめの「ラメ」。まあ、歌詞に意味はない(笑)。楽しく歌いたいね。
歌の練習のほかに、立ち稽古が始まるまでにやるべきは、やはり台詞を体に入れることです。声に出しながら台本を読んで、ひたすらブツブツブツ、僕の場合はとにかくそれを繰り返す。
シェイクスピアみたいなとんでもなく長い台詞を覚える時は、別にノートを作って書き出すこともあります。そうして、ここからここまでを一息で言う、とメモしたり。
言いにくい台詞は、劇団四季の発声練習の「母音法」で書き出して覚えることも。たとえば、「言いにくい」は「いいいうい」。これは、僕と鹿賀丈史が『ベニスの商人』に出演した際に始まった練習法で、最初はみんな、稽古をしていても、どこの台詞を喋ってるかわからなかったもんだよ(笑)。
でも確かに、母音を叩き込むことでそこに子音を乗せた時に明確に話せるようになる。ハキハキ喋りすぎるのはよくないけど、やっぱりお客様に届くことが大事だから。そうやっていろいろな方法を使いながら、とにかく台本と向き合って台詞を腹に落としていくわけだ。