食育について勉強中の安藤さんは、長女・桃子さん(右)、孫と味噌づくり(写真提供:安藤さん)

安藤 家の外では、本来の元気な私の着ぐるみを着て、笑っているフリをしていたの。でも実際は、好きだったお料理や洋服のコーディネートもできなくなってしまって……。取材を受けている最中に、突然ワーッと涙があふれてきたこともあった。

自分の周りの世界がすべてモノクロに見えていたから、みんなが「美味しい」と言いながら食べているお料理も美味しそうに見えないし、家族が大笑いしながら見ているテレビ番組も全然面白く感じられなくて。

加藤 50代、60代の頃はつらかったのね。何がきっかけで、病気を克服したのかしら?

安藤 2006年に母が亡くなった後も、10年くらいはうつから抜けられなかった。結局、母を救えなかったという喪失感が大きくて。

ところが17年の年末に自宅で掃除機をかけていたとき、テレビで漫才が流れていて、それを見て思わず「プッ!」って噴き出したの。「あれ? 今、私、笑った?」と思った瞬間に、それまでモノクロだったテレビの画面が突然カラーに変わったのよ。

加藤 うつが飛んでいったのね。

安藤 そうだと思う。驚いて部屋の中を見回すと、赤や黄色の本の背表紙が目に飛び込んできて。その足で物干し台に行って空を見上げ、「空、青い!」と心から感動。そんなあたりまえの日常の風景を取り戻せたことが、本当にありがたかった。

実はその少し前に次女(俳優の安藤サクラさん)の娘が生まれて、その小さな足を見て「母の命はここにも生きている」と感じたことも、克服のきっかけになったのかもしれない。

後編につづく

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