ライティングの極意
また、水槽の設備としてもう一つ、ライトを忘れてはならない。
水槽の上部には、一般的に強烈な光源がぶら下がっている。アクアリウムに使われるような小さな水槽なら蛍光灯や普通のLEDライトで事足りるが、水族館の設置型の水槽ともなると、もっと強力なLEDライトや、グラウンドの投光器に使われるようなメタルハライドランプ(通称メタハラ)が使われる。水の中は空気中より光がずっと散乱するので、小さめの水槽にもかなり強烈な光を使わないと、底まで明るくならないのだ。
ただし、どんな水槽にも思考停止でメタハラを使えばいいわけじゃないのだ。例えば、
・水草やサンゴの水槽:光合成に必要*なので、メタハラのような強力なものを多数据え付けて、全体を明るくする。
・魚を飼う大水槽:手前を明るく、後ろを暗くしたり、あえて壁に光を当てないようにしたりすることで、実際以上の奥行きを演出する。そして擬岩(※)により、暗いところを好む生き物のために陰をつくる。
・クラゲの水槽:背後を暗くした状態で、サーチライトのように水槽の一部を明るくして、クラゲの稜線(輪郭)をくっきりと映し出す。
・深海魚の水槽:光は大敵なので、客がギリギリ見える程度の弱い光を使う。園館によっては、深海生物の眼には見ることができない赤い光を使っているところもある。
こんな感じで、ライティングも使い分けるのだ。
*サンゴは動物の仲間であるにもかかわらず、光合成のための強い光が必要。何で? と思った方は鋭い。実は、サンゴは動物でありながら、体内に「褐虫藻」という藻の仲間を飼っていて、光合成でつくった栄養を分けてもらっているのです。だから、自然下では強い光の当たる、綺麗な浅い海にしか棲めないんだよね。
※人の手で精巧につくられた偽物の岩のこと