小魚が食いつくされるようなことはない

ただし、“寄ってたかって小魚を食いつくしてしまう”なんてことはないので、ご安心を。というのも、水族館の魚は当然、餌の時間に毎日、(死んだ)魚を餌として貰っている。目の前にある餌を放置して、わざわざ逃げる魚を襲うことにエネルギーを割こうとはしないだろう? だから、餌を十分にやっている限り、小魚と大魚は混泳できるのだ。自然の摂理を感じる展示である*。

ただし、水槽に明らかに違和感のある小魚やエビなどが入っていたら、それは“活餌”(※)である可能性が高い。つまり展示ではなく、活餌として入れられたってことだ……。

『水族館のひみつ-海洋生物学者が教える水族館のきらめき』(著:泉貴人/中央公論新社)

*ちなみに、アマゾンの大水槽にピラニアの群れを入れた場合、おそらくこれと同じことが起こる。「凶暴なピラニアの群れなんか入れたら、巨大な魚でも食らいつくしてしまうんじゃないの?」と思った方。全くの逆である。ピラニアが逃げまどい、巨魚の餌になって食らいつくされてしまうのだ。実はピラニアって、歯こそ鋭いけど、すっごく臆病なんだよね。

もっとも、外国産のピラニアはイワシのように掃いて捨てるほどは入手できないので、アマゾンの巨魚とは隔離して飼っているのが常なんだけど。

※「生きた餌しか食べない」生き物のために用意される。生きた貝やカニ、小さなエビ、中にはメダカや金魚を使うことも。