確実に顧客数を増やしていったネットショップ
佐藤さんは生まれたのも同じ岩泉町。地元の高校を卒業後、一旦は東京にある会社に就職したが、1年後には故郷へUターンしてスキー用品を扱う会社に転職した。
その後、盛岡市内の食品加工会社に転職。リンゴのレトルト食品を作る仕事に従事していたが、その会社がなくなったことで今度は盛岡冷麺のシェアではナンバーワンの会社に移籍。そこで食品の包装作業に取り組んでいた。
その間も休日などは趣味の山歩きを続け、その様子を動画撮影してはYouTubeチャンネル「原生林の熊」にアップし続けていた。
それらが少しずつ注目を集めるようになり、やがて佐藤さんが採取した山菜やキノコが美味しそうだということで所望する人たちが現れた。そうしたリクエストに応えるため、会社員の傍ら通販も手がけるようになった。採ってきた山菜類を加工し、真空パックにする技術はサラリーマン時代に学んで手慣れたものだ。原生林の熊工房の商品は確実に顧客数を増やしていった。
そんな佐藤さんに転機が訪れたのは、3年前。56歳のときだった。

春先に岩泉町で採れたフキノトウ(写真:『ドキュメント クマから逃げのびた人々』より)
地元の町議会議員からの「地域おこし協力隊に参加してほしい」との要請を受けて会社を辞め、地元の美味しいものを全国に発信する「原生林の熊工房」の仕事に本腰を入れることにしたのだ。